ビューティーレポート vol.6 : 加藤智一

「あなた自身を表現する”部屋の香り”」




 東京に住んでいる外国人宅へ遊びに行くと、玄関から“いいニオイ”が漂っていることにハッとする。

あるフランス人宅では、まず玄関で香るのは、心が華やぐジャスミン。その後、リビングルームに入るとサイプレスやミントなどのすっきりとしたグリーンの香りに迎えられ、手を洗おうとバスルームに行くと、清涼感あるレモングラスに癒される…と、香りにリズムがある。部屋や空間によってインテリアを変えるように、それぞれに香りが配されていて、しかも全体がコーディネートされているのだ。

 友人は「(フランスの)自宅がそうだから、日本でもそうしているだけ」と、こともなげに話していたが、初めてその習慣を知った時は驚くとともに、なんて素敵な空間で暮らしているのだろうかと、日本にいながらにしてカルチャーショックを受けた。

 しかし、考えてみれば“自室”というのは、ものすごくプライベートな空間。住んでいる本人と、本人を取り囲むすべてのニオイが濃密に詰まっているスペースであり、その空間のニオイをケアしないのはルーズなことかもしれない。加えて、最近の日本のマンションや家屋は気密性が高いため、本人が気づかない間に洗濯物や汗、料理など、生活習慣のニオイがこもっている場合があるだろうし、これまでの経験的から、そういう部屋は(たとえ内装が立派であっても)意外に多いように思う。



 だから、そんな“こもったニオイ”を回避するためにも、もっと積極的に活用したいのが、ルームフレグランスだ。最近はドラッグストアに行けば、消臭スプレーのような商品も販売しているが、ファッションやスタイルにこだわりがあるのに、ルームフレグランスが消臭スプレーではさすがに味気ない。やはりブランドのこだわりが生かされている香りや、アロマキャンドルのように、スペースをしっとりと香りづけできるアイテムのほうが望ましい。

 もちろん、おしゃれ外国人のように、空間ごとに香りを変えなくてもいいが、友人を迎えるスペースには香りづけをしたいもの。それに誰かを招かなくても、香りづけした部屋は住んでいて居心地が良く、その香りはあなた自身を表現することにもなるだろう。

 前述のフランス人の友人は、実際に香りがしなくても“いいにおいがしそう”な雰囲気を醸し出していた。そう考えると、ルームフレグランスには身体や空間だけでなく、本人の存在感を香らせるほどの威力が秘められているのかもしれない。


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